医療法人すこやか会 おおたにクリニック

おおたにクリニック
【御坊市の小児科,内科,神経内科,心療内科,リハビリテーション科

〒644-0023 和歌山県御坊市名田町野島1-7
TEL 0738-29-2951

診療の合間に 1

「母子保健奨励賞への感謝を込めて-私と母子保健-」
「股関節脱臼と赤ちゃんの向き癖について」

診療の合間に 2

「てんかんと自動車運転、運転免許」
「南方熊楠はてんかんであったか-扇谷明氏の論文から-」
「奥田英朗氏の著書にみるこころの病気」

診療の合間に 3

「てんかん診療と病診連携」
「開業医と発達相談」
「天地有情ー南木佳士のこと」

診療の合間に 4

「日本てんかん協会機関誌「波」の記事より」
「メディカルクオール2014年11月号、12月号より」

診療の合間に 5

「這えば立て(日高野67号)]
「小児期・青年期患者の地域ケアを考えるセミナー」案内文
 

 

※上記QRコードを読み取っていただきますと、一般の携帯からは携帯サイトが、スマートフォンからは、スマートフォンサイトが閲覧可能です。

認知症、うつ、不眠について

認知症、うつ、不眠について

ネクストというミニコミ紙(21紀州社発行)の求めで、認知症、うつ病、不眠症についての原稿を作成しました。ミニコミ紙の記事はそのまま、添付しておきます。記事は字数の都合で簡略化していますので、当方が送った原稿を別に公開しておきます、参考にしてください。

 

認知症について

1)認知症って何

かつて痴呆症と言われていた病気と同じです。有吉佐和子の小説「恍惚の人」(1972年初版)に書かれているような状況になります。平たい言葉でいえば「ぼけたかな?」といった状態です。「痴呆」も「ぼけ」もいろいろな意味で表現として問題があるということで、厚労省が「認知症」という言葉に統一することになりました(2004年)。したがってメディアや臨床現場での使用、行政用語はすべて「認知症」になっています。専門学会では「痴呆症」も使用されることもあります。英語では「dementia(デメンシア)」といいます。ちなみに認知は「cognition」です。

2)認知症によくある症状は?

症状で一番大事なものが記憶の障害です。記憶というと「もの覚え」ということになります。もの覚えが悪い、つまり「もの忘れ」が中核の症状となります。最近は病院などでも「もの忘れ外来・相談」という診察時間があります。認知症ではないかと心配な方はここを受診されるといいでしょう。
おじいさんが留守番をしていた午前中にお客さんが見えたが名前が思い出せない。夜、家族と話をしていて、「朝、お菓子持って仏さん参りに来てくれた人がいたけど誰だったかな?」というのは普通の記憶の衰え(うっかり忘れ)です。息子さんが仏壇を見て「お菓子がお供えしてあるけど、誰か来てくれたのかな?」とおじいさんに尋ねても、「誰も来やせん」と頑なに否定するようになるとちょっと心配です。
この記憶の障害が多くの「複合的」な症状を伴います。「時間的・空間的・人の判別」、「うまく言葉が出ない、表現ができない」、「間違ったことをする、うまく物事を処理できない」、「見聞きしているものが何かわからない」、などです。具体的に言うと、道具や品物、洗濯物を上手に区分けして片づけることができなくなった、衣服を下着から順番に着られない、料理や仕事の段取りがうまくできない、場所、周囲の人との関係性や時間的概念が把握できない(今いる場所、畑に行く道順、お嫁さんや孫の名前や自分との関係、日付・季節、食事が済んだかなどがわからないかあやふや)などです。
症状は徐々に進行するので、初めは「うっかり忘れ」の段階でも、1年経つと症状が進行していることもあります。家族でよく話をし、おじいさんやおばあさんにいろいろなことを尋ねることが大切です。その中で症状に気づくこともあります。最近では「軽度認知障害」という、真の認知症の前段階にあたる概念が注目されています(4年以内に半数が認知症になると言われている)。この概念でも「記憶」が主な指標です。日常生活は特に問題なくできていても、「本人が物忘れしやすいと訴える」、「記憶力の低下が年齢よりも進んでいるように思う」、「買い物に行ってもコインの計算が面倒なので、ついお札を出してしまう」、「電車を乗り換えて娘の住まいへ行くことができなくなった」、「簡単な立体図や地図がうまく描けなくなった」などが症状です。

3)認知症は予防できますか?

基本的には予防できません。アルツハイマー型やレビー小体型、ピック病などと診断される認知症は脳の神経細胞に余計なものが蓄積し、壊れていく(蓄積・破壊のいずれが先かは不明な点もあります)「変性疾患」です。今の医学ではこれは予防できません。他に脳梗塞や脳出血の後遺症による認知症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症など予防や脳外科的治療がある程度可能な病態もあります。「認知症かな?」とご本人、ご家族の方が心配になったら、医師に相談して、一度は脳の画像(CT、MRI、SPECT、PETなど)の検査をしてもらうといいでしょう。

4)認知症になったらどうしたらいいでしょうか?

最近になって「認知症に効く」という薬が数種類発売されています。その嚆矢となったのが「アリセプト(塩酸ドネペジル)」です。しかしいずれの薬も病気の進行を少し(1年前後)遅らせるだけで、「効く」と言っていいのか、難しいところです。大きな副作用も少なく、他に薬もないので処方されているといった方がいいかと思います。認知症は進行がゆっくりのこともあり、薬が効いているのか、もともとの自然経過なのかわかりにくい患者さんもおられます。ご家族の対応や環境の変化で症状が改善する方もいるので、実際には病気が進行していても、ご本人は日常生活がうまくできて、穏やかに過ごせることも多くなります。薬を飲むということは医者にかかるということなので、ご家族も病気を受け入れて、ご本人に寄り添ってもらえることがいい結果を生んでいることもあります。
認知症の患者さんへの対応ですが、ご本人に「認知症です」ということをはっきり告げることの可否については専門家の間でも意見が分かれているようです。「ガン」の告知は最近では当たり前のようになっていますが、認知症ではもっとあいまいな表現で済ませているのが実情のようです。典型例が「もの忘れ外来」で、「認知症外来」とは言いません。ご家族にはある程度の経過をお知らせしても、ご本人には「ちょっともの忘れが強いですね、でも体はお元気ですよ」くらいに説明することが多いのではないでしょうか。
認知症の方への日常の対応については、以前に比べると理解が進んでいるように思います。基本は「今まで営んできた生活や人生を肯定的に評価してあげる」「本人を丸ごと受け入れて、苦手のところは手助けしてあげること」、「認知症があっても幸せに生きられることをご家族の方が理解し、受け入れてあげる」ことだと思います。具体的な困ったこと、つまり「食事をしたことを忘れる」、「財布を盗られた」、「今日は何日?」、「どなたですか?」、「勝手に外に出ていく」、「誰かが部屋にいると訴える」、「乱暴をする、暴言を吐く」、「夜中に大声を出す、勝手に暴れる」などについては、医師や介護の方に相談すると、その方の家族構成や生活状況に沿ったアドバイスをいただけると思います。
デイサービスやショートステイなどの介護サービスは、家族の負担を軽減するためには必要です。しかし認知症の方ご本人にとっては、住み慣れた環境や生活の場とは異なる異次元の場所に移動し、毎回出会うスタッフも変わるわけですからとまどいも多く、どのようなかたちで連携するか難しい面もあると思います。

 

不眠症(睡眠障害)について

1)なぜ眠れないのか?

不眠の原因にはさまざまなものがあります。臨床的には「5つのP」と言われています。「physical:身体的原因」、「physiological:生理学的原因」、「psychological:心理的原因」、「psychiatric:精神的原因」、「pharmacological:薬理学的原因」です。身体的原因としては痛みやかゆみ、夜間の頻尿、呼吸困難などです。生理学的原因とは、日勤と夜勤の繰り返しなど、通常の睡眠パターンが種々の条件によって困難である場合、心理的原因としては急性・一過性ストレスによる適応障害性不眠、精神的原因としてはうつ病など各種の精神疾患によるもの、薬理学的原因としてはアルコールや薬物による不眠です。このように多くの原因が不眠と関連しているので、一概にこのような経過で眠れないとは言えません。また、各々の患者さんでも、単一の原因で不眠になるとは言えないこともあります。子どもの時はどんな状態でも眠れたのに、大人になったら眠れなくなったなどというのはよく経験することです。成長とともにストレスが多くなるのか、睡眠のパターンが変化するのか、病気とのかかわりが増えるのかなど、それぞれが複雑に絡み合っているのでしょう。

2)眠れない時はどうすればいいか?

不眠の状態を評価することは、対応を考える意味で大切です。眠れないのは毎日か時々か、眠れないと翌日に困ったことが起こるか、日中に状態がよく過ごすにはどの程度の睡眠時間が必要か、週日と週末の就床時刻と起床時刻、カフェイン飲料(コーヒーや紅茶、日本茶、栄養ドリンクなど)やアルコール飲料の摂取量や種類、就床直前の過ごし方、病気に罹患しているか、などです。これらの項目に問題があれば、その対応を考えることになります。時々眠れなくても、翌日困ったことがなければ気にしなくてもいいかもしれません。週末の起床時刻が遅いことは週日の不眠につながるかもしれません。規則正しい睡眠が一番重要です。
カフェインは睡眠を妨げます。アルコールの摂取は寝つきにはいいかもしれませんが、その後の中途覚醒(夜間に目覚める)や早朝覚醒(朝早く目覚める)の原因なりますし、睡眠の質も悪化させます(うまく睡眠がとれない)。また、痛みを伴う病気やむずむず足症候群、睡眠時無呼吸症候群などがあると睡眠が妨げられます。病気の詳細はここでは省略します。

3)睡眠薬について

睡眠薬にはいろいろな種類があります。薬局などで処方箋がなくても購入できるのは「抗ヒスタミン薬」で、鼻水や乗り物酔いなどに使われるのと同じ成分です。眠気は来ますが、だらだらとした睡眠になります。医療機関で処方されるのはベンゾジアゼピン系のものが多く、睡眠作用とともに抗不安作用があります。気持ちが落ち着く作用があるので、精神的に悩みがあり、不安が強い場合はよく効きます。効果が弱いものから強いもの、効果持続時間も短いものから、少し長いもの、1日以上持続するものまでさまざまです。「くせになる」というのはこのタイプのものです。けれども決して容量依存性(だんだん量を増やさないと効かなくなる)はありません。少し飲むだけで、良好な睡眠が得られますが、完全に止めるのは難しいこともあります。最近は睡眠・覚醒のペースメーカーの役割を果たす脳内のメラトニンという物質と同じ作用をする睡眠薬が発売されています。軽度の睡眠障害にはこの薬剤を使えば、生理的睡眠に近いパターンに修正することができるかもしれません。医師に相談してください。

 

うつ病について

1)うつ病って何?

うつ病は「心の風邪(かぜ)」とよく言われます。これは風邪のように軽いというわけではありません。風邪のように誰もがかかる病気という意味です。ある調査では20歳以上の方の8%くらいが一生のうちに一度はうつ病の症状を経験すると報告されています。うつ(鬱)というくらいですから、憂鬱な気分になることが主な症状です。けれども憂鬱な気分以外にも、症状があり本人も周りも気づかないことがありますので、注意が必要です。うつ病患者さんでは脳の神経細胞の機能異常や神経伝達物質のバランスがうまくとれなくなっていることがわかっています。けれどもこれらが根本的な原因なのか、別の原因があって、結果としてそうなっているのか、はっきりとわかっているわけではありません。日本人の自殺が毎年3万人を超えるようになっていますが、その主な原因もうつ病と言われています。

2)うつ病によくある症状は?

うつ病はこころの病気ですので、主な症状はこころに関係するものです。抑うつ的気分、何ごとにも興味や喜びがもてない、やる気がでない、焦燥感(イライラする、不安が強い)、集中力・注意力が低下する、などがその代表的な症状です。それ以外に不眠、食欲が出ない、体が疲れやすい、肩がこりやすい、頭が痛い、のどがかわく、下痢や便秘、体重が減る、手足のしびれや痛み、など体の病気と区別が難しい症状が強くでることもあります。体の症状が強く出て仕事や家事ができない時に、内科や外科で診てもらっても原因がわからない場合があります。そんな時は一度うつ病ではないかと考えてみてください。うつ病の症状が進行するとだんだん自分に自信が持てなくなり、自己評価が低下します。さらに「自分さえいなければ」とか「自分は役に立たない人間だ」、「人生に希望が持てない」などの悲観的考えが大きくなってきます。「死んだ方がましだ」と考えることもあります。相談できる人がいればいいですが、自分だけで思いつめてしまうと自殺につながることがあります。

3)うつ病は予防できますか?

うつ病になりやすい性格というのが知られています。生真面目で、きちょうめんで、融通がききにくいなどです。このような性格の方は仕事や生活が順調に行っている時は心配ないですが、困難や悲しいこと・苦しいことに出会った時には、あまり思いつめないで、他人や家族に相談して辛さを分かち合ってもらうことが大切です。人生の節目にある大きな出来事は、めでたいこと(結婚・出産・就職・昇進など)も、悲しく・苦しいこと(家族との死別、失業、転勤、離婚、別離、自身や家族の病気など)も等しく精神的ストレスと強く関係しています。このストレスをどのように受けとめ、上手にストレスをやりすごすかがうつ病予防のこつです。
最近は上記のような性格的な問題だけではなく、人間関係や他人とのコミュニケーションをうまくとれない人に、別のかたちでのうつ病が多くみられるようになっています。仕事には情熱が持てなくて出勤はしんどいけれど、休暇をとって旅行に出かけるのは支障がない、などを訴えて診察に来られる若い人がいます。このような方には、仕事のモチベーションを高める手立てを相談し、やりがいをどう見つけるかなどの適切なアドバイスが必要になりますが、予防となるとむつかしい面もあります。学生時代にゲームやネットの中のバーチャルな世界と生の人間関係の世界には乖離があることを学んでおくことが必要なのかもしれません。

4)うつ病になったらどうしたらいいでしょうか?

大事なのはうつ病かな?と疑うことです。自分で気づけば周囲に相談することです。決して「家族や会社の人に心配させてはならない」と思って抱え込まないことです。以前はうつ病などの精神疾患は他人には言い出しにくいものでしたが、最近は世間の理解も進んでいますので、カミングアウトもそんなに心配することはないと思います。ご本人が気づかず周囲が気づいた場合は、それとなくうつ病の可能性に言及して、精神科や心療内科への受診を勧めてあげてください。ここで述べた症状に心当たりがあれば、なおさらです。うつ病のきっかけとなったできごとにどう対応するか、現在の気分やこころの持ちようをどう修正するか、仕事は続けるか休職するか、薬をどう服用するかなど、第三者や医療関係者の方が適切かつ迅速に処理しやすいこともありますので、「こころの風邪かな」と気軽に医療機関に出向いてください。「ちょっと体調が悪いだけなので、根性で治そう」、「今まで病気で休んだことはないので、今回もすぐに治るだろう」という思い込みや、「もうちょっと頑張ってみなさい」などの励ましは逆効果です。自分で自分を追い込んでしまったり、医療機関への受診が遅れたりしていいことはありません。
抗うつ薬は21世紀に入って、種類が多くなり、副作用も比較的少ないものが発売されています。SSRI(デプロメール、パキシル、ジェイゾロフトなど)、SNRI(トレドミン、サインバルタなど)、NaSSA(リフレックスなど)などです。いずれもセロトニンやノルアドレナリンというモノアミンの脳内での神経伝達や再取り込みを修飾する薬理作用を有する薬剤です。従来の抗うつ薬より副作用は少なく、飲みやすいところが利点ですが、効果については既存薬と大差はないとの知見が多いようです。個人的にはうつ病の病態がすべてこれらのモノアミン代謝で説明できるかは疑問があります。将来もっと別の脳内物質がうつ病やその他の精神疾患に関与していることが判明するかもしれません。